≪言葉と行動≫
彼はいつもどうしようもなく唐突だ。
「愛しているよw」
ハートマークのつもりか語尾を跳ね上げて、にこにこと此方を見つめてくる。
その科白の寒々しさに、私は思わず首筋を粟立たせた。
・・・今度は何を企んでいるの。
「何のご冗談ですか」
「冗談なんかじゃないさ」
その返答の素早さ・・・怪しい。
「そんなことより、仕事の手を休めないで頂けるとありがたいのですが」
両の手を組んでその上に顎を乗せて、書類はちゃっかり肘の下だ。
あぁそうか。
時計を見上げると一時間が経過していた。
そろそろ駄々を捏ねる時間なのだ。
「中尉、君の気持ちが聞きたい」
今日は随分と性質が悪い。
最近、余り構ってあげられなかったからだろうか。
・・・そんな、犬じゃあるまいし。
それにうちのハヤテ号の方がよっぽど聞き分けが良い。
見せ付けるように大仰に溜め息をついてやると、彼は拗ねた表情をした。
「愛してると言っているのに、何故溜め息をつく」
『愛してる』なんて。
今更だ、そんな科白。
言われるのは初めてではない。
恐らく最後にもならない。
冗談めかして言うこの言葉に、只のコミュニケーション以上のどんな価値があるというのか。
慣れないのは首筋が粟立つほどの白々しさだけで、赤面どころか鼓動のリズムが変化することも無い。
・・・そう、慣れない。
この言葉の持つ白々しさ、寒々しさ。
ワザとなのだ。それは分かっている。
彼は真剣に言うのが怖いのだ。
真剣に言うと、途端にこの言葉はずしりと重みを増す。
全く、不思議な言葉があったものだ。
いや、言葉とは全て最初からそういうものだ。
気持ちの有無で意味が全く異なる。
「中尉?」
気が付いたら、彼の顔が間近にあった。
真っ直ぐに射抜くような目。
「愛してる」
間近にある、真剣な彼の顔。
忘れていた。
彼は心にも無いことを口にするのが上手。
腹では何を考えているのか。こんなに間近に居ても掴めない。
そして。
「っっ///」
恨めしく思う、私の中の女の部分。
落ち着け。
相手は同じ口で、違う舌を使って、何人もの女に同じ事を囁いた男だ。
そんなヤツの吐く言葉などに、私は動揺させられたりしないでしょう?
かなり悔しい。
たかが一言にいっぱいいっぱいだ。
結局、この言葉が本心かなど分からないのだ。
面白がる気配がするのが悔しくて、睨んでやった。
「随分と調子の良い口ですね」
「おかげさまでね」
してやったりな子供の笑顔。
そう言えば、彼は不意打ちに弱かった。
仕返ししてやろう。
ホルスターに手をかけると、彼の表情が引き攣ったのが見えた。
「悪い口にお仕置きしてあげましょう」
言って、逃げ腰の彼を引き寄せて、唇にお仕置きをした。
・・・いや、ご褒美か。
きちんと真剣に言えたご褒美。
私もまだまだ甘い。
ねぇ、言葉を与えるより、行動で示したほうが伝わりやすいでしょう?
呆気に取られている彼を見て、私は悪戯が成功した子供のように笑った。
Fin.
*紅音さん有難う御座います!*
紅音さんから頂きました素敵小説です!ぱちぱち
子供っぽく笑う増田も可愛いけど、「お仕置き」をあげる
リザさんにもメロドキュンですvv
そして新堂からのお礼は、紅音さんからのリクエストで、
素敵小説に合う絵という事でした!なんだかコラボちっくだなぁと
一人うはうはしていました(きもいやつだな!)
好きにしてもいいという事だったので載っけちゃいました!
紅音さん、本当に有難う御座いました!
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